置くだけのフロアタイルは、塩化ビニルでできています。水を通しません。こぼしても拭き取れるのも、水回りに使えるのも、その性質があるからです。そして、カビの話もここから始まります。
床の上に敷けば、その下は外気から切り離されます。もともと乾いている床なら、それで何も起きません。乾いていない床なら、湿気は行き場を失って、そこに留まります。
この記事では、置くだけのフロアタイルやクッションフロアでカビが出る条件を三つに整理して、そのうえで、出てしまったときにどこまでが自分で戻せる範囲なのかを書きます。
塩化ビニルは、水も空気も通さない
フロアタイルもクッションフロアも、主な材料は塩化ビニルです。この素材は水を通しません。空気も通しません。
だから汚れに強く、濡れた雑巾で拭けます。洗面所やキッチンで使われているのも、この性質があるからです。置くだけの床材が便利なのは、水を通さないからです。
そして、カビが出るのも同じ理由です。
床の上に敷いた瞬間から、その下は外気から切り離されます。フローリングは木ですから、わずかに湿気を吸ったり吐いたりしています。その出口をふさぐ形になる。もし下に水分が残っていれば、それは抜けません。温度も一定に保たれます。カビが育つ条件が、そこにそろいます。
これは製品の欠陥ではなく、素材の性質です。「置くだけだからカビる」のではありません。「下に水分があるとカビる」のです。この二つは違います。前者なら置くだけという方法そのものを避けるしかありませんが、後者なら、条件を見れば避けられます。
クッションフロアとフロアタイル、湿気の面での違い
検索していると、この二つが混ざって出てきます。湿気の話をするうえでは、違いは二つだけです。
素材はどちらも塩化ビニルで、水を通さない点は同じです。変わるのは形です。クッションフロアはシート状で、部屋を一枚か二枚で覆います。フロアタイルはピース状で、四十五センチ角ほどの板を並べます。
このため、水が入る経路の数と、あとから確認できるかどうかが違います。
クッションフロアは継ぎ目が少ないので、上から水がしみ込む隙間はほとんどありません。そのかわり、壁際や洗面台の足元から一度下に入ると、広い面積で抜けなくなります。確認しようとすれば、部屋の端からめくることになります。
フロアタイルは継ぎ目の数だけ経路がありますが、気になったときに一枚だけ外して下を見られます。
どちらが安全か、という話ではありません。点検のしやすさが違います。置くだけで使うのであれば、あとから確認できるフロアタイルのほうが、扱いやすい場面が多くなります。
カビが出る三つの条件
現場で見てきたかぎり、置くだけの床材の下にカビが出るときは、次の三つのどれかが当てはまっています。
| 条件 | 下で起きていること | 敷く前の見分け方 |
|---|---|---|
| 下地に水分が残っている | 乾ききっていない床に蓋をする形になる | 手のひらで触るとひやりとする。押すと沈む場所がある |
| 風が通らない | 湿気も温度も動かないまま滞留する | 北側の部屋、家具の下、クローゼットの中 |
| 水回りの端部が処理されていない | 端から水が入り、下に溜まって出ていかない | 洗面台やキッチンの足元、目地の際が黒ずんでいる |
下地に水分が残っている
いちばん多いのがこれです。
新築や大規模修繕の直後、雨漏りやこぼした水を乾かしきる前、結露する部屋。どれも、床そのものが乾いていません。そこに水を通さないものを敷けば、湿気は下に閉じ込められます。
敷く前に、手のひらを床につけてみてください。周りより冷たく感じる場所、押すとわずかに沈む場所があれば、そこは乾いていません。梅雨の時期に敷くのも、できれば避けたほうが安全です。晴れた日が数日続いたあとに敷くだけで、条件はかなり変わります。
手のひらで分からないときに使える方法がひとつあります。五十センチ角ほどのポリ袋を床に広げて、四辺をテープで留め、一晩置いてください。朝、袋の裏側に水滴がついていれば、その床はまだ湿気を出しています。ついていなければ、敷いて構いません。道具はいりませんし、どの部屋でも同じように試せます。
風が通らない
北側の部屋、大きな家具の下、クローゼットの中。空気が動かない場所です。
湿気は、動く空気があれば抜けていきます。抜けないところに溜まる。家具を置く予定の場所こそ、敷く前に下地を確認してください。あとから見ようとしても、家具をどけないと見えません。
ベッドの下やソファの下は、季節の変わり目に一度、タイルを一枚外して見ておくと安心です。置くだけなら、それが数秒でできます。
水回りの端部が処理されていない
洗面所とキッチンです。
置くだけの床材は、名前のとおり置いてあるだけなので、端が固定されていません。壁との取り合い、洗面台の足元、扉の枠。こうした場所にはどうしても隙間が残ります。そこに水が入ると、床材の下に回り込んで、出ていく先がありません。
目地の際が黒ずんできたら、それは下に水が入っている合図です。その段階で一枚外して確認すれば、たいていは間に合います。
renovy の場合
ここからは、renovy が現場でどうしているかを書きます。
renovy は、市販の「置くだけ」タイルを扱っていません。理由は、いま書いたとおりです。端が固定されていない以上、水が入る経路が残ります。市販の置くだけタイルは、ピースの間が五ミリ前後空くことがあります。賃貸のお部屋で数年使うことを前提にすると、そこを見過ごせませんでした。
代わりに、剥がせるように固定して貼っています。接着剤は使いません。退去のときにもどせることは捨てていません。置くだけの利点である「もどせる」を残したまま、端と目地だけを解決する、という考え方です。
目地は〇・五から一ミリで取っています。この幅には理由があります。こぼした水は、これくらいの隙間なら表面張力で目地に留まります。すぐ拭けば、下まで行きません。広すぎれば水が入りますし、逆に詰めきってしまうと、温度が上がって塩ビが伸びたときに逃げ場がなくなり、床が突き上げます。

貼る前に、下地の状態を目視で確認しています。色と、手で触った感じで見ます。乾いているかどうかは、湿度計を当てるより先に、見れば分かることが多い。木の色が部分的に濃くなっていないか、触ってひやりとしないか。ここで気になれば、その日は貼りません。
室温は二十五度を目安にしています。塩化ビニルは温度で伸び縮みします。寒い日にきつく詰めて貼ると、暖かくなったときに材料が伸びて突き上げます。逆に暑い日に伸びた状態で貼れば、冬に縮んで隙間が開きます。二十五度前後で貼っておけば、一年を通しての動きがいちばん小さくなります。
手順の話ではなく、判断の話です。どれも、下に湿気を閉じ込めないための判断として行っています。
もし出てしまったら
ここがこの記事の結論です。カビが出たとき、自分で戻せるかどうかは、カビている場所で決まります。
表面だけの白カビなら、一日で戻せます
床材の裏側や目地の際に、白い粉のようなものが付いている状態です。
この段階なら、タイルを外して拭き、下地を乾かせば元に戻ります。ブロワーや扇風機で風を当てて、半日から一日置けば十分です。拭くものは消毒用エタノールで足ります。塩素系の漂白剤は、塩化ビニルを傷めたり変色させたりすることがあるので、床材そのものには使わないでください。
置くだけの床材のいちばんの利点が出るのは、この場面です。一枚外して、拭いて、乾かして、戻す。接着してあればこうはいきません。
下地までカビていたら、床材側では対処できません
タイルを一枚外して、下のフローリングを見てください。
木の表面が黒く斑点状になっている、白っぽく粉を吹いている、触ると柔らかく沈む。このどれかが当てはまるなら、カビは床材の下ではなく、下地そのものに入っています。
この状態は、床材を替えても、拭いても解決しません。管理会社か大家さんへの相談になります。賃貸のお部屋であれば、下地は貸主の持ち物です。早く伝えるほど、話は簡単になります。写真を撮っておいてください。
判断に迷ったら、下地側と思って相談したほうが安全です。
敷く前に、確かめておくこと
置くだけの床材が悪いわけではありません。乾いた下地、風の通る場所、端に水が来ない場所。この三つがそろっていれば、置くだけで足ります。四角い小部屋で、自分の手で変えたい方には、いまでも良い方法です。
逆に、洗面所やキッチン、北側の部屋、家具で塞がってしまう場所は、敷く前に一度下地を見てください。手のひらを当てるだけでも、分かることがあります。
敷いたあとも、季節の変わり目に一枚外して下を見る。それだけで、白カビの段階で気づけます。置くだけを選んだのなら、外せることを使ってください。



